体系的な腰痛体操「ACEコンセプト」を知ろう!
大人が腰痛対策をすべき理由
A.腰痛になるとお金と時間が奪われます。
厚生労働省の平成28年の国民生活基礎調査によると、腰痛の有訴率は20.7%で全体の1位になっています。また、通院率は9.8%で男女ともに上位5傷病に入っています。
医療費と生産性でみた場合の疾病コストでは「肩こり・腰痛」がトップで、こうした慢性疼痛による損失は1週間平均で4.6時間に及ぶという試算もあります。
スポーツや習い事など、大人になってから何かを挑戦しようと考えたときにお金と時間はとても大切で、これを腰痛で奪われるのはすごくもったいないです。
そこで今回は体系的な腰痛体操「ACEコンセプト」の概要を書いていきます。
結論としては腰痛対策は3タイプに分けて考えようです。
腰痛対策は体系的に考えるべき
インターネットを探すと腰痛対策としてストレッチ、腰痛体操、筋トレなど様々なものが紹介されています。
これらはどれも行うタイミングが正しければ効果のあるものです。
ではどんなタイミングで行うべきなのか
これに対して、体系的に紹介している論文があります。
腰痛に対する運動療法のニューコンセプト* ─ ACE(エース)をねらえ!─
著:松平 浩 他
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/43S3/0/43S3_109/_pdf
今回はこの論文を元に書いていきます。
ちなみにACEとはAlignment、Core muscle、Exercise-induced hypoalgesiaの頭文字をとったものです。
腰痛対策の3つのタイプ
タイプ① アライメントの適正化(Alignment)
「アライメント」とは関節や骨の並びのことを言います。
ここでは自然な姿勢を作るために必要なストレッチなどの柔軟性を改善させるトレーニングを行なっていきます。
タイプ② コア(深部筋)の強化(Core muscle)
良い姿勢を保つには体幹の筋力強化が必要です。
ここでは体幹の安定化を担う深部筋のトレーニングを行なっていきます。
タイプ③ 内因性物質の活性化(Exercise-induced hypoalgesia)
長い期間腰痛に悩まされている方は、脳が疼痛を感じやすい状態となっている場合があります。(疼痛過敏)これらを改善し、正常な状態にするためのエクササイズをここでは行なっていきます。
具体的にはウォーキングやサイクリング、エアロビクスなどの全身運動が挙げられます。
トレーニングの使い分け
これらの使い分けについて論文上ではこう述べられています。
プライマリケアで多くを占める動作や姿勢に関連するいわゆる腰痛症(メカニカルペイン)に対しては,タイプ①エクササイズを優先する。
痛覚過敏があるなど内因性鎮痛機構が正常に機能していない症例ではタイプ③エクササイズを優先させ,下行性疼痛抑制系を賦活する薬物治療も併用しつつ痛み閾値を上昇させてから,タイプ①あるいはタイプ②エクササイズを処方する。
タイプ②エクササイズは,タイプ①エクササイズが習慣化された後の再発予防や姿勢保持対策として重要であり,また,すべり症や後・側弯症を含む脊椎不安定がある症例では早期から導入する。
腰痛に対する運動療法のニューコンセプト* ─ ACE(エース)をねらえ!─
著:松平 浩 他
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/43S3/0/43S3_109/_pdf
プライマリケアはここでは「身近な医療的問題」と考えてもらって良いと思います。
内容は難しいですが、痛みの強い時にはタイプ①、痛みが少し落ち着いてタイプ①が習慣化されてきたらタイプ②、長い間痛みが続いている人はタイプ③を行うと意識してもらえれば大丈夫です。
そしてこれらは最終的には全てを習慣として行えることが望ましいです。
仕事の休憩中にはタイプ①のストレッチ、家に帰った後タイプ②の体幹トレーニング、休みの日にはタイプ③のランニングというように使い分けられればベストです。
腰痛対策のエビデンス
僕がこの論文を進めるのには2つ理由ががあります。1つ目は前述の通りセルフケアの流れが体系的であるということ。
もう1つはエビデンスレベルが高いという点にあります。
理学療法士協会が出している背部痛のガイドラインによるとストレッチングとコアトレーニングは推奨グレードB、エアロビックエクササイズ・フィットネス(有酸素運動)は推奨グレードAです。
推奨グレードAは行うように進められる強い科学的根拠がある。グレードBは行うように進められる科学的根拠があるとされます。
また、これらのトレーニングはエビデンスレベル2で1つ以上のランダム化比較試験による研究とされています。
こういった点からもこれらの対策を行なっていくことが有効であるといえるでしょう。
まとめ
今回は腰痛対策の体系的な考え方について書いていきました。
次回はタイプ①アライメントの最適化の具体的方法について書いていきます!